貨物利用運送事業免許取得後の注意事項【違反事例別対応編】

貨物利用運送事業免許取得後のライセンスの維持に必要な手続のうち失念しやすい違反事例及び違反事例ごとの対応方法についてコメントしたいと思います。

前回、行政監査の際によく判明する違反事例として各種書類の掲示義務違反について取り上げましたが、その他のよくある違反事例としては、以下の3つが挙げられます。

1.長期間にわたって定期報告書が未提出のケース
以前、貨物利用運送事業者は、ライセンスを維持するために、少なくとも毎年の定期報告書を忘れずに提出するようにとコメントしましたが、この定期報告書が長期間にわたり未提出だったことが判明した場合には、最低でも直近3事業年度分の提出を求められます。

これは、国土交通省や地方運輸局では、書類の保存期間を5年と定めているため、過去の事業年度の定期報告書を後から遡って提出されてもあまり意味がないからです。

もっとも、仮に直近3事業年度分の定期報告書を提出しても過去の違反事由が帳消しになる訳ではないので(あくまでも救済措置の1つに過ぎません)、この定期報告書は、毎年の提出期限までに必ず提出するように心掛けてください。

2.基本事項に関する変更届出が未実施のケース
貨物利用運送事業は、実運送事業と異なり変更手続を失念していても事業を継続することが可能なため、ついつい各種変更手続を怠っているケースがよく見受けられます。

軽微な変更手続のうち失念しやすいのが、貨物利用運送事業に関する基本的事項(主たる事務所の住所・氏名、代表者、その他の役員、利用する運送事業者の概要)に関する変更届出です。

貨物利用運送事業に関する基本的事項について、長期間にわたって変更届出を行っていないことが判明した場合には、直ちに最新のものに更新することが求められます。

もっとも、定期報告書の未提出と同様に、最新のものに更新したとしても過去の違反事由が帳消しになる訳ではないので、少なくとも会社変更登記を行った場合には、貨物利用運送事業の変更届出を行うことを失念しないようにご注意ください。

3.事業計画・集配事業計画に関する変更手続を怠っているケース
貨物利用運送事業の事業計画・集配事業計画のうち、「利用運送の区域・区間」「貨物の集配拠点」「集配営業所の位置」については、失念しやい重要な変更手続に該当するため、事業計画・集配事業計画変更認可申請を忘れないようにご注意ください。

これらの違反事項が判明した場合には、重大な違反事例として行政指導・是正勧告を受けるのが一般的です。そのため、上記2手続とは異なり決められた期日までに「事業改善報告書」の提出が求められるケースが多く見受けられます。

この事業改善報告書を決められた期限までに提出しないと最悪の場合、事業停止などの行政処分を受け、WEBサイトに処分対象事業者名や処分内容などが公表されることになります。そのため、この報告書を期限までに提出できないという事態だけは避けてください。

なお、この事業改善報告書には、①違反事項の是正対応計画、②違反事項の発生原因の分析、③違反事項の再発防止策などを盛り込む必要があります。一度、行政指導や是正勧告を受けると監督官庁から継続的に行政監査が必要な事業者と認識されてしまうため、単なる反省と是正対応だけではなく、現実的な再発防止策を提案し、それをきちんと実践する必要があります。

違反事例のうち上記1・2レベルについては、自社でも対応は可能だとは思いますが、上記3レベルの違反事例になってくると、おそらく事業者自身で全てに対応するのは相当難しいと思われます。というのも、この事業改善報告書の提出期限は、是正勧告から1か月以内とあまり時間的な余裕がないからです。

以上のように、よくある違反事例と行政監査を受けたときの違反事例ごとの対応方法についてコメントして来ましたが、貨物利用運送事業者の方は、先ずは上記1・2レベルの手続については、徹底するように心がけ、次に、上記3レベルの手続に対応できるよう少なくとも専任の担当者1名を社内に置くことが望ましいと思われます。

ただし、上記1~3のどのレベルの手続についても時間と労力を要することから、行政書士などの専門家に貨物利用運送事業免許の維持・管理(メンテナンス)を依頼して、客観的な立場からチェックしてもらうというのも一つの方法だと思います。